とよたストーリー

手仕事の中の虫たち

右の2つの作品は「名古屋古流凧」で、「虻」と「蝉」である。和紙と煤竹で出来ている。どちらも同じ大きさで、構造もほぼ変わらないが、目の位置と胴の模様に違いがある。左右に揺れながら揚がる特徴があるが、その姿はあたかも空を気ままに泳ぐ虫たちのようだ。

凧揚げは江戸時代から大衆の娯楽であり、地方色豊かな、大小様々な形のものが作られたが、天高く揚がるためには基本的には軽量で、バランスがよくなければならない。この凧も外見は愛らしいが、その骨組みは繊細な手仕事で、計算されつくされた図面のようにさえ見える。そうした機能美も、虫に似通うものがあるかもしれない。

左の作品は、「筒描」という染色技法によって表現されたものである。4巾の木綿地で、もともとは夜具地だったかと思われる。中央に揚羽蝶の文様を大きく置き、その背景に牡丹の花と、7頭の蝶を散らしている。蝶は、幼虫からサナギを経て、美しい成虫の姿へと変化するため、不死や再生の象徴とされ、家紋にも多く使われている。

虻、蝉、蝶といった虫たちも、日本の暮らしを彩る大切なモチーフだった。

豊田市民芸館 学芸員 白鳥 誠一郎

手仕事の中の虫たち

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